宮城県石巻市 高砂長寿味噌本舗「感謝の味噌/醤油」



震災後、東松島にある味噌工場は、ゴールデンウィーク明けに、
被害が甚大だった渡波地区の醤油工場は、6月下旬に、工場の再稼働までこぎつけることができました。

醤油工場は海水による汚染がひどく、当初は震災前の6分の1程度の稼働状況でしたが、
11月現在、皆様からの応援のおかげで、大半の製造を再開することができるようになりました。
本当にありがとうございます。

おかげさまで、幸運にも私たちは復興を進めることができています。
しかし一方で、周辺の環境はまだまだ震災前のようには戻っていないのが現状です。
これまで私たちの味噌や醤油を使ってくれていた水産加工会社や石巻市内の飲食店も大半が被災し、
営業を再開出来ているところは、震災前の3分の1以下です。

被害の規模があまりに大きいため、行政からの復興計画が遅れており、
まだほとんどの会社やお店が再開を足踏みしている状態です。

このような状態の中で、私たち自身、これまで自社を支えてきてくれた地元石巻に対して何かできないだろうか
と、真剣に考えました。

そんな折、東松島の味噌工場のすぐ側に、仮設住宅が設置されました。
2,000人くらいを収容できる、かなり大きな仮設住宅で、震災で家をなくされた方達が移り住んでいます。
10月には、石巻市内の避難所が全て廃止され、家をなくされた皆様は仮設住宅に移られました。

仮説住宅の設置により、以前に比べれば、プライバシーも守られ、整った生活を送ることが出来るようになりました。
しかし、突貫で作った仮説住宅です。
交通の便は悪く、お年寄りの被災者などは日常の買い物もままならない、というのが、残念ながら今の実状です。
これまで避難所で共同生活をしていた中で培われた「コミュニケーション」が無くなってしまい、
震災のショックが今になって現れてきたり、精神的に欝になってしまう方も増え、問題になっています。

私たちは、この仮設住宅の方たちに少しでも力になりたいと思い、
毎月一回、東松島の工場でお祭りを開催しています。
仮設住宅の方たちに向け、私たちの味噌を使った「とん汁」を振る舞ったり、
会社に送られてきた支援物資を分け合っています。

ある日のこと、障害者施設の方から相談をいただきました。
障害者施設は、震災前、いろいろな企業から仕事をもらうことで「労働賃金の向上」を目指し、
日々努力してきたのですが、震災の影響により仕事が少なくなり、震災前の水準を維持できない、とのことでした。
行政も、障害者施設への支援については優先順位が低くなってしまい、途方に暮れているようでした。
震災で被害に遭ったのは、健常な人たちだけではありません。
こうした悩みを抱える障害者施設も多数見られました。

私たちにできることは何でもご協力をしようと思い、私たちの製造している商品で、
これまで自分たちでラベルを貼ったりしていた作業の一部を、施設の方たちにお願いすることにしました。

こうした活動の大切さは、震災が起こらなければわからなかったことだと思います。

震災前、「高砂長寿味噌本舗」のブランドで味噌や醤油を使った菓子や惣菜などを開発していました。
震災後も引き続き開発を続けようと、新商品の企画をしていますが、
その多くは障害者施設に製造を依頼しております。
被災者同士、できることで助け合って、前に進んでいきたい、そう考えております。

先日、震災後初となる、宮城県味噌醤油工業協同組合主催の「第59回本場仙台味噌・醤油鑑評会」が開かれ、
私たちの作った醤油が、最高賞(東北農政局長・知事賞)を受賞しました。

最高賞受賞の報告を聞いたとき、会社のみんなで泣いて喜びました。
震災後、みんなで立て直し、製造を再開することができた醤油工場で作った醤油でした。

津波にも耐え、奇跡的に残った「醤油の素」と、震災から立ち直る従業員一同の頑張りにより、
色や香り、味に高い基準を求められる鑑評会にて、最高の評価をいただくことができた、と思っています。
最高賞をいただいたこの味が、地元石巻の復興に役立つよう願っています。

「感謝の味噌」も、震災後に製造再開し、仕込むことができた味噌です。
半年間の熟成期間を経て、ようやく皆様の元にお届けすることが可能になりました。

もちろん、「米麹+大豆麹」による、私たち独自の発酵技術で作っています。
「塩辛い」というイメージの強い【仙台味噌】ですが、私たちの味噌は「味の強い」味噌です。
少量でも大豆の風味や旨みを豊かに出すことができ、
和食の鉄人「道場六三郎先生」や食生活ジャーナリストの「岸朝子先生」、「浅香光代さん」など
多くの著名人にもご愛用いただいている味噌です。

たくさんのお客様からいただいた応援の心で、復興を進めてくることができています。
皆様からいただいた「希望」に応え、
私たち自身も地元石巻で復興を頑張る企業様たちの「希望」となれるよう、今後も頑張ってまいります。

皆様からいただいた「希望」への、「感謝」の心で商品を作り、ご恩返しができればと思い、
商品は「感謝の味噌」・「感謝の醤油」と名付けました。
皆様からのご恩と、こういったご縁を持てたことに感謝し、引き続き復興に向けて頑張って参ります。